日々、いろいろ気になるニュースがある。
中日新聞記事によると、岐阜県は、美濃加茂市のソニー工場が撤退した後の緊急雇用対策補助制度として、2億3900万円もの補助金を出して、コールセンターを誘致した。しかし、その補助金を受けた情報サービス業「DIOジャパン」はたった33人を雇用しただけで(しかも内14人が非正規雇用)、1年間の補助金交付期間を終えてすぐに、美濃加茂市にファックスだけ送って一方的な事業打ち切りを伝えてきたという。マスコミの取材もシャットアウトしているらしい。
たった33人、たった1年間、それも地元の人がそれだけ雇用されたかどうかもわからない事業に2億円超の公金支出である。これは誰が責任を負うべき問題であろうか。おそらくうやむやにされそうだ。
ため息が出る。
ただこれは、岐阜の田舎町で起きた小事件ではなく、今やワールドワイドで行われている「不正」の縮図である。
今年、あの多国籍企業「トヨタ」は数年ぶりに法人税を日本に納めたという。世界中で車を売りまくり、世界のあちこちに工場や支社を作り事業拡大しながら、株主には配当金を出し続け、政党への企業献金はしながら、法人税を納めてこなかった。それでいて安倍政権には法人税減税を迫る。企業の社会保険料負担が大きすぎると誇張し、医療や介護を非難する。
同じようなことはアマゾンやスターバックスのような企業もやっている。海外進出をする際に、ある国で得た利益を他の国に進出する資金にすり替える。消費税も納めない。
そうした行為を、ヨーロッパでは、租税回避行為として何とかしようとしていると聞くが、この日本では問題視されていないようだ。相変わらず、企業の利益が日本の利益、という「成長戦略」が声高に叫ばれ続けている。しかも、民間企業の船舶が外国で機雷攻撃を受けたら自衛隊が出動できるようにするという。ほんらい企業が警備保障会社に払うべきような負担を、自衛隊という国家組織が、私たちの税金が負担する。
このようなケースは枚挙にいとまがなく、マイケル・サンデルは『それをお金で買いますか 市場主義の限界』でたくさんの例を挙げている。
これは、この国の過去の歴史には無かった事態である。大多数の国民からすれば大きな負担を強いられているのだが、皆、不平も言わずに、安倍政権を支持する。
新自由主義時代における、新たな身分制度、現代版の士農工商制度の固定化が進んでいる。この閉塞した事態に、頭の良い若者は気づき始めている。それが牛丼チェーンのアルバイター不足に表れていると思うし、若者の「うつ病」現象の増加の一因だと思う。今の若者を「忍耐が無い」「ゆとり教育世代の甘え」などと一方的な断罪をする大人はもう少しよく考えていただきたい。
しかしながら、若者からも支持率の高い安倍政権。このようなトリックはどのような仕組みで進行しているのか。マイケル・サンデルに考えて欲しいが、私も私なりに少しづつ考えているところだ。